僕がコミュニティ活動をしてきてよかったこと
「コミュニティ活動をしていて、よかったことって何ですか?」と突然聞かれて、答えられなかった。
この記事の結論
コミュニティ活動を続けてきて、知らない世界を知り、普段なら出会えない人と出会えました。その経験が積み重なり、今度は自分が誰かに新しい世界を届ける場を作れるようになりました。
- 自分の進路や興味を変える出会いがあった
- 一人では実現できないイベントを、仲間と実現できた
- 学ぶ側から、誰かの挑戦を支える側へ立場が変わった
この記事で一番伝えたいのは、コミュニティ活動を続ける理由は、一つに決めなくていいということです。
面白そうだから参加する。人に会いたいから行く。履歴書に書ける経験がほしいから挑戦する。動機が自分本位でも、活動を通して誰かの役に立つことがあります。自分が楽しめる理由を持っているからこそ、活動を続けられるのだと思います。
この記事は、三田学園の文化祭で開催した「知らない世界の話をしよう」で話した内容をもとに、発表では話しきれなかった考えを文章にしたものです。コミュニティ活動に興味はあるものの、参加する理由をまだ見つけられていない人に向けて書いています。
1. きっかけは、うまく答えられなかった質問だった
三田学園の文化祭で、「知らない世界の話をしよう」というイベントを開催しました。2日目はGDGoC Kobeとの共同イベントです。
その場で、参加者から質問を受けました。
「コミュニティ活動をしていて、よかったことって何ですか?」
僕は、すぐに答えられませんでした。よかったことがなかったわけではありません。むしろ、思いつく経験が多すぎて、一言にまとめられなかったのです。
僕はGDG Greater KwansaiのOrganizerとして活動し、技術カンファレンスのスタッフをし、登壇もします。自分でイベントを企画することもあります。
活動を続けていると、それぞれの経験が当たり前になっていきます。改めて理由を聞かれるまで、自分が何を得てきたのかを整理できていませんでした。
そこで、質問への答えを探すつもりで、コミュニティ活動をしていてよかったことを書き出しました。
2. 知らなかった世界に触れ、進路の見え方が変わった
コミュニティ活動をしていると、インターネットで調べるだけでは出会えない世界に触れられます。
今年の夏、神戸大学の研究室を見学する機会がありました。研究室で行われている研究を見たり、学生や研究者の方から直接話を聞いたりしました。
それまでの僕は、大学進学にあまり積極的ではありませんでした。エンジニアとして働くなら、必ずしも大学に行く必要はないと考えていたからです。
研究室を実際に見て、話を聞くと、その考えが変わりました。大学には、大学という環境だからこそできる研究や、同じ関心を持つ人と議論できる場があります。進学先としての大学が、急に具体的な選択肢になりました。
もちろん、研究室を一度見学しただけで進路が決まったわけではありません。それでも、知らない場所に行き、そこで活動している人の話を聞くことで、将来の選択肢の見え方は変わります。
コミュニティ活動で得られるのは、知識だけではありません。自分がまだ知らない選択肢の存在を知ることです。
3. 年齢や所属より、興味をきっかけに人と話せる
高校生の普段の生活では、同年代の人と接する時間が多くなります。技術コミュニティに参加すると、そこにいる人の幅が一気に広がります。
大学生や大学院生、企業のエンジニア、研究者、技術書の著者、OSSのメンテナー、Google Developer Expert(GDE)。普段なら接点のない人とも、同じ技術に興味があるという理由で話せます。
年齢や所属の差がなくなるわけではありません。知識や経験の差もあります。それでも、最初の会話で「高校生だから何を話せばいいか分からない」と困ることは、学校の外に出る前より減りました。
何をしているのか。何に興味があるのか。どんな問題を面白いと思っているのか。コミュニティでは、肩書きよりも話したい内容が会話の入口になります。
一度の出会いが、次の出会いにつながることもあります。あるイベントで知り合った人と別のイベントで再会し、その人から別のコミュニティを紹介してもらう。そうした小さな接続が、自分の行動範囲を広げていきました。
人とのつながりは、最初から大きな成果として現れるものではありません。次に行く場所を一つ増やしてくれるものです。
4. 一人ではできなかったイベントを実現できた
僕は、一人で作業するのが好きです。プログラミングも小説を書くことも、一人で集中できます。
ただし、一人でできることには限界があります。
三田学園の文化祭で開催した「知らない世界の話をしよう」は、その限界を実感したイベントでした。ITだけでなく、研究、AI、創作など、普段は接点のない分野の話を聞ける場にしたいと考えました。
高校生一人で、複数の分野から登壇者を集め、会場を準備し、当日の運営まで行うのは簡単ではありません。そこで、これまでの活動で知り合った人たちに協力をお願いしました。
GDG Greater Kwansai、GDGoC Kobe、Alpha+ Projectをはじめ、登壇を引き受けてくださった方、運営を手伝ってくださった方、広報に協力してくださった方がいます。
イベントは、企画した人だけでは完成しません。話す人、聞く人、準備する人、当日を支える人がいて、初めて場になります。
自分一人で作業するのが好きなことと、誰かと協力して大きなものを作ることは両立します。むしろ、一人で集中する時間があるからこそ、協力が必要な部分も見えやすくなりました。
5. 学ぶ側から、誰かの挑戦を支える側へ移った
活動を始めた頃は、自分が学ぶことが中心でした。イベントに参加し、発表を聞き、知らない技術を知る。それだけでも十分に楽しかったです。
続けているうちに、自分が誰かの学びを支える場面が増えました。
Google I/O Extended Osaka 2026では、ハンズオンの講師を担当しました。教材を考え、説明し、参加者が手を動かす時間を支える役割です。
自分にとっては知っている内容でも、初めて触れる人にはつまずく場所があります。どこで迷うかを想像し、説明の順番を変え、質問に答える。その作業を通して、知識を持っていることと、人に伝えられることは別だと分かりました。
Hono Conference Tokyo 2026では、登壇者だけでなくスタッフとしても関わりました。登壇する側と運営する側の両方を経験したことで、イベントが多くの準備に支えられていることも実感しました。
そして、三田学園のLT会では主催者になりました。自分が話す場を探すだけでなく、誰かが話せる場を作る側に立ったのです。
発表することは楽しいです。一方で、誰かの発表を成立させることにも別の面白さがあります。
6. 人と人をつなぐ役割に惹かれるようになった
主催者が、すべての分野に詳しい必要はありません。面白い知識や経験を持っている人と、その話を聞きたい人がいるなら、両者が出会える場所を作ればいいのです。
僕は、その接続を作る過程が好きです。
以前は、誰かが活躍する様子を見守る「主人公を見守るモブ」のような立場でいたい、と話したことがあります。自分が前に出て活躍することも楽しいですが、誰かが挑戦できる環境を作ることにも魅力を感じます。
「知らない世界の話をしよう」では、僕がすべてを話すのではなく、異なる世界を持つ人たちに登壇していただきました。参加者が「こんな世界があったんだ」と思えたなら、主催者として嬉しいことです。
知らない世界を見せてもらう側だった僕が、今は誰かに知らない世界を届ける場を作っています。この変化は、コミュニティ活動を続けたからこそ起きました。
7. 面白そうな寄り道が、次の挑戦を連れてくる
最初はイベントに参加していただけでした。それが、スタッフになり、登壇し、講師を担当し、イベントを主催するようになりました。
最初からこの順番を計画していたわけではありません。参加した場所で人と出会い、声をかけてもらい、面白そうだと思ったことを引き受けてきただけです。
一つの経験が次の経験につながります。以前は遠い存在だと思っていた人と活動したり、想像していなかった役割を任されたりすることもあります。
この予測できなさが、僕は好きです。予定通りに進めるより、面白そうな方向へ少し寄り道したほうが、結果的に自分の知らない場所へ行けることがあります。
ただし、機会が必ず向こうから来るわけではありません。参加する、話を聞く、やってみたいと伝える。その小さな行動を重ねていると、挑戦できる選択肢が増えていきます。
8. 履歴書ゲーミングも、立派な動機の一つ
ここまでの話は、少しきれいすぎます。僕には、もう少し不純な動機もあります。
履歴書を面白くしたいのです。
コミュニティの運営、カンファレンスでの登壇、イベントの主催、OSSへの貢献、企業での開発経験。将来、こうした経験が並んだ履歴書を見せて、「高校生の頃からこんなに色々やっていたの?」と驚かれたら面白そうです。
もちろん、履歴書の項目を増やすためだけに活動しているわけではありません。面白そうだからやってみる。人と出会う。一緒に別のことを始める。その結果として、履歴書に書ける経験が増えます。
大切なのは、項目の数ではなく、経験を自分の言葉で説明できることです。何を考えて参加したのか。自分は何を担当したのか。どこで困り、何を学んだのか。
「人生を生き急ぐな」と言われることがあります。でも、早くゴールに着きたいわけではありません。目の前に面白そうな寄り道があれば、全力で楽しみたいだけです。
そして、せっかくなら、その寄り道を履歴書にも残しておきたい。そんな動機で活動してもいいと思っています。
9. 続ける理由は、一つでなくていい
ここまで書いて、コミュニティ活動を続けている理由を整理できました。
知らない世界を知りたい。面白い人と出会いたい。新しい技術を学びたい。大きなことを実現したい。誰かの挑戦を支えたい。人と人をつなぎたい。履歴書を面白くしたい。
自分のための理由もあれば、誰かのための理由もあります。きれいな動機だけではありません。それでも問題ありません。
「自分にとって面白いから参加する」は、十分な参加理由です。自分が楽しめるからこそ、活動を続けられます。続けているうちに、結果として誰かの役に立ったり、誰かが挑戦できる環境を作れたりします。
コミュニティ活動の価値を、最初から一つの正しい形に当てはめなくていいのだと思います。
10. まとめ
コミュニティ活動をしてきて、知識や経験だけでなく、将来の選択肢、人とのつながり、挑戦する機会を得ました。
特に印象に残っているのは、知らない世界を見せてもらう側だった自分が、今は誰かに新しい世界を届ける場を作っていることです。
活動は簡単ではありません。イベントの準備には時間がかかりますし、思い通りに進まないこともあります。それでも続けているのは、苦労を上回る面白さがあるからです。
先日の質問に、今ならこう答えます。
知らなかった世界を知り、そこで出会った人たちと、今度は誰かに新しい世界を届けられるようになった。それが、僕がコミュニティ活動をしていて一番よかったことです。
次に同じ質問をされたときは、今度こそすぐに答えられそうです。